女子は9歳でも結婚できる?
モロッコの法学者・・・というかサラフィー主義者として有名なムハンマド・アルマグラーウィーالشيخ محمد المغراويが、8月12日に自身のウェブサイト上で発行したファトワーの波紋が広がっている。
さてこのファトワー。そもそもは『クルアーン』第65章4節において、まだ月経のない女性の離婚について言及されていることについて、これは女性が初潮をむかえる前に結婚できるという意味なのか、と問われたことに対して発行されたものである。マグラーウィーはそのなかで、月経の有無と結婚できるか否かは一切関係がなく、預言者ムハンマドが7歳のアーイシャと結婚し、彼女が9歳の時に床入りしたように、9歳の女子は十分に結婚できる、と回答している。
同ファトワーがモロッコの雑誌やテレビで取り上げられたところ、女子の人権を侵害するものであるとか、小児性愛や性的暴力を助長させるものであるとかいった批判がよせられ、9月21日にはとうとうモロッコの最高学術評議会が同ファトワーは法的根拠に欠ける無効なものであるという声明を発表した。またムラード・バクリーという女性弁護士は、同ファトワーがモロッコ刑法に違反しているとしてマグラーウィーに対する裁判の申し立てをしている。
私が気になるのは、なぜかこれらの論調が全体として、同ファトワーはスタンダードなイスラム解釈から逸脱している、という趣旨である点だ。というのも、あまりの批判の多さにマグラーウィー自身も反論を展開しているように、彼のファトワーは伝統的なイスラム法解釈に則っているからだ。彼があげている種々の典拠にみられるよう、彼の属するマーリク派においては最もスタンダードな解釈であるといっても過言ではない。イスラム法においては婚姻可能年齢に下限をもうけず、人間は生まれてすぐにでも婚姻可能であるとするのが通例である。
他方、現行のモロッコ民法においては、婚姻年齢の下限を満18歳と定めている一方で、満18歳未満であっても裁判官の許可を得れば婚姻できるとも定めている。この不思議な二つの規定は、モロッコが憲法においてイスラム国家であることをうたっている一方で、ユニセフの「子どもの権利条約」をはじめ様々な国際条約を批准してもいることを勘案すると理解可能であろう。
イスラム国家、つまりイスラム法を至高なる神の法として奉じる国家でありながら、国際社会に身をおく世俗国家でもあるという「矛盾」は、婚姻をめぐる問題だけではなく、思想信条や言論の自由をめぐる問題などにおいても露呈することが多い。しかしほとんどの場合、この「矛盾」が歴然と存在していることは意図的に無視され、問題はあいまいなまま、うやむやのうちに収束する。しかしそういつまでも、この「矛盾」を隠蔽しておくことはできまい。マグラーウィー問題が今後どうなるかはわからないが、せめてメディアはこうした「矛盾」の存在をふまえて記事を書いてほしいものだ。
※あまり関係ないが、アラビーヤの記事に「アーイシャがムハンマドと床入りしたのは9歳ではなく本当は19歳の時だ」というサウジの歴史研究者の見解(というか研究成果)が載っていたのが興味深かった。そうなんだ・・・![]()
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